肺がん転移を抑制する効果が、心不全治療用のホルモン製剤にあることが判った。
がんが心臓へ転移することが稀であることから、心臓特有のANPというホルモンに着目した研究チームが、 2009年から552人の非小細胞肺がんの患者データを詳細に調査したのだ。
その結果、心不全治療などでホルモン剤を使用していた肺がん患者の2年後の再発率は4.5%と低い一方で、ホルモン剤を使わなかった肺がん患者の19.2%にがんが再発していた。このがん再発率の大きな差は、がんの進行度にも関係なく、ホルモン剤のがん抑制機能と解釈できた。
人のがんを移植されたマウス実験でも、ホルモン剤の がん抑制効果は検証され、有望な結果が得られた。がん細胞を移植したマウスにホルモン剤を投与すると血管転移するがん細胞数は、肺腺がんの場合で約5分の1、肺の大細胞がん,大腸がん,乳がんの場合には約3分の1にまで減少したのだ。
これらのがん抑制効果は、ホルモン剤が血管の内壁を守ることから、がん細胞が漏れ難くなっている仕組みが解明されている。
ホルモン剤の肺がん再発予防効果が実証されただけでなく、他のがんに対しても転移予防薬となる可能性が高いため、今後の研究進捗に期待がかかる。
ホルモン剤の がん転移抑制効果は、大阪大と国立循環器病研究センターが発見した。