2012年6月15日金曜日

肝臓がん治療に電極針

慢性肝炎や肝硬変に最善の治療を施しても肝臓がんを発症する症例は多い。

肝臓以外の他の臓器は普通、がんの進行度により治療の方法が決まるが、肝臓がんは進行度だけでは治療法が決められない。肝臓が元気な状態であれば、大きながんでも手術で切除できる。しかし、肝臓がん患者の多くが、がん患部だけでなく肝臓全体が弱っていることが多く、その場合は手術が困難となる。肝臓全体の状態が輪悪い場合には、がんが非常に小さくとも治療ができないこともあるのだ。

肝臓がんを完全に治す=根治するには、手術で切除する以外に、ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術という治療法が主流になりつつある。

ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術は、いわゆる切らずに治す手術の一種で、 がん患部に針を刺してがん細胞を殺す経皮的な治療方法。肝臓に約1.5ミリ太さの電極針を刺し、がん細胞を100度に熱して死滅させる。ラジオ波焼灼術は、肝臓全体の状態が悪くても治療が可能だが、大きさが3センチを超える がんの治療は難しい。

手術もラジオ波焼灼術が行えない場合には、塞栓(そくせん)療法、抗がん剤による化学療法が選択される。塞栓療法とは、がん患部に栄養を送っている肝臓の動脈を閉じることで がん細胞への栄養を遮断し、兵糧攻めでがんを壊死させる治療法。

さらに先進医療としては、放射線の一種の重粒子線を用いてがん細胞をピンポイントに死滅させる治療が注目を集めている。重粒子線がん治療は、副作用の少なく、治療効果の高い近未来の治療法だが、導入施設がまだ少なく、治療費が約300万円と高額であることが問題だ。

近年の肝臓がんの治療成績は大きく改善されている。がんが早期に診断されるようになり、抗ウイルス薬など肝炎・肝硬変の治療効果が向上したことが貢献しているのだ。さらに、新しい治療薬の開発が相次いでいることで、肝炎が撲滅できれば肝臓がんの撲滅も近いと見られている。