がん細胞だけを死滅させる仕組みの一端が解明された。これによって副作用の少ない新薬の開発が期待される。
愛知県がんセンター研究所が、人間などの哺乳類の細胞にある突起物「一次線毛」の働きを利用し、がん細胞だけを死滅させる仕組みを解明したのだ。
細胞の一次線毛は細胞に一つずつ存在しており、細胞分裂を起こす時は隠れている。アンテナを伸ばすように一次線毛が細胞から突き出ると、細胞分裂が停止するのだ。しかし、この一次線毛はがん細胞には存在せず、がん治療への応用が期待されていた。
研究グループでは人間の子宮頸(けい)がんの細胞と正常な網膜細胞をそれぞれ培養し、一次線毛の働きを抑え、細胞分裂するのに必要な酵素「オーロラA」をそれぞれの細胞から取り除き、2、3日置いて観察した。その結果、がん細胞の方は中途半端に細胞分裂が進み、異常な状態で停止した上、自浄作用が働き死滅することが確認できた。一方、正常な細胞は一次線毛が飛び出し、正常な状態を保ったまま細胞分裂が停止したという。
研究成果は米科学誌「ジャーナル・オブ・セルバイオロジー」に掲載。